ここ一ヶ月ほど、このサイトの本来の意味を忘れて、公開されたばかりの新作を追ってしまっていたような気がする。確かに関連する既存DVDも紹介しながら、なんとか体裁を保っていたが、私の元来の目的はあまた出回るDVDやBDに埋もれている良作を見つけ出して、皆さんに紹介したいというものでした。

  なんか、本来の趣旨をはずれて、話のきっかけを得ようと映画館に出向くことが増えて、ジックリ考えながら見直すっていうことを忘れてしまっていたようです。確かに今、この瞬間に話題の映画には惹かれますが、自分の面持ち、ちょうど今、感じていることが観賞感に多大な影響を与えていることを忘れていました。たとえ良い作品でも、その時、その時の感情に左右されて見方も変わります。どうしようもなく落ち込んでいる時に出会ってしまって、本来の映画の魅力を受け入れられずに記憶から抜け落ちてしまったものも少なくないはずです。

 以前から行き詰まった時や、とてつもなく落ち込んだ時、私はよく仕事をサボりました。世間では働き方改革が云々と話題になっていますが、自分としては、もう数十年前から勝手に実践していました。よくやったのは午後の半日を休みを取って、すぐさま帰宅(たいていは体調不良と申し出ているので帰らざるを得ない)すると、お風呂に入って、いつもの倍ほど時間をかけて入念に身体の隅々まで洗い流し、サッパリしたところでDVDを一本観るってことが私のリフレッシュ法でした。

 じゃあ、何を観るのかっていうと、思いっきり感動を味わえそうなもの、できれば初見でって、ずいぶん欲張りな欲求で探したりするのですが、どうしても思い当たらない時には『フィールド・オブ・ドリームス』や『山の郵便配達』なんか、そんな感じの映画が多かったように思います。

 決して父親との間に確執があったわけではないのですが、隔たりを感じている父と息子の関係の修復というシーンには思わず目頭が熱くなって、たびたび、もう一度顔を洗うことになりました。ん、それで結構スッキリするものです。家族が帰宅する前にリセットした状態を取り戻すことができます。

  傷は浅いうちに手当てすれば痕を残しませんゼ。その数時間、考えを中断すると、今まで思い悩んだことが嘘のように解決策が見い出されて、翌朝の足取りも軽やかになりました。幸い今はリタイアの身。ストレスフリーの毎日を謳歌しているので、そんな感情の起伏もなくなりましたが、なければないで、平坦な毎日につまらなさを感じて嘆く始末。とうしようもないゼ、まったく……。なんてネ。

 前置きが長すぎるけど、8月2日にリリースされたばかりの『天国でまた会おう』は、そんな気持ちに陥った時には是非お薦めしたい出色の出来映え。ひょっとしたら、未読だが原作を凌駕するような作品かも知れない。戦争に翻弄され痛めつけられる庶民の精一杯のリベンジ。そこに父との確執が絡み合い、ファンタジー仕立ての目にも刺激を与える傑作でした。2019年の公開らしいが、気づかずにスルーしてしまっていたと思ったら、公開から半年も経たずにDVD化されました。100年ほど前のフランスのお話。時間も場所もずいぶん離れているので「物語」として入り込みやすいと感じました。

 そういや、どっかでこんなトーンの映画が……って考えていたら思い出した。『ビッグ・フィッシュ』がこんな感じに思えたなぁ……。ホラ話か、現実か見分けのつかないなかで、数多く登場する異形の人びとが味わう疎外感が結構感じられてティム・バートンらしいが、父の最期にわだかまりが解消される結末にヤッパリ涙してしまう……。

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著者

fat mustache

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