BS朝日の土曜日夜にやっている「町山智浩のアメリカの今を知るTV」は私にとって貴重な情報源の一つにになっている。この春にはアラバマ州を4回にわたって特集し、奴隷解放、公民権運動、バスボイコット運動などの詳細を30分というわずかな時間枠のなかながら意欲的に報道していた。時折YouTubeにアップされているのでサーチしてみても……とは思うが、『ロング・ウォーク・ホーム』や『グローリー 明日への行進』で観た、それぞれのエポックが現地の取材を通して鮮明に浮かび上がっている。セルマの行進は当時、参加した当人へのインタヴューや今でも行われている記念式典の裏側も見られて、世間での取り上げ方、とりわけ進歩的白人と称する連中と実際に迫害を受けてきた現地の黒人の間にかなりズレがあると感じさせられた。

 そんなふうに感じている時に『ブラインド・スポッティング』を公開初日に観てきた。結構な入りで、注目度の高い作品だとは思ったが、どうも意識高めの観客ばかり……。一般受けは望めそうにもなかった。

  舞台はカリフォルニア州オークランド。全米一、人種的融合の進んだ町とされ、日本からの移民も最初にこの地に降りついている。当然、移民は経済的に困窮しており、いわゆる貧民街の様相を呈していて、そこから抜け出せない人びとが折り重なって、最も知安の悪い町になっていった。

  その町に今、ジェントリフィケーション(町の高級化)の嵐が吹き荒れている。幼なじみのコリンとマイルズ。黒人のコリンは刑期を終えて指導監督期間もいよいよオーラス間近、自由の身まであと3日となった。一方の白人マイルズは、日本風に言えば「地元のヤンキー」。だが生粋のオークランドっ子を自負する彼の家庭は、妻のアシュリーは黒人で、幼いわんぱくな息子を育てている。昔ながらの環境を受け、俺こそがオークランド・スタイルのスタンダードなんだぜ、とでも全身で告げている感じ。

  おとなしく、お行儀良く、3日間を過ごして自由を手に入れようとするコリンに対して、マイルズは次から次と問題を起こして彼を悩ませる。しかし、ある夜、逃走した黒人が白人警官に射殺される場面に遭遇して、マイルズとは決定的に違う黒人の立場を思い知らされる。白人なら決して撃たれることはないのに……。同じ仲間でありながら、世間の扱いの違いに直面する時、一体何を考えるのだろう……。

 とてつもない映画にめぐり逢ったものだ!と感じてしまった。ニューズウィークのコラムで大場正明氏はフランス映画の『憎しみ』との類似性に触れておられたが、このDVD を探すのは至難の業。どうにもならない黒人と白人のギャップをより鮮明に感じるのなら、『ヘイト・ユー・ギブ』がお薦め。伝説的ラッパーである2パックの使った THUG LIFE のフレーズを取っている。青春ものにしているので軽く観られるが、深刻な問題を提起する快作。是非、ご覧おきを……。

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著者

fat mustache

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