見逃していた『バイス』がDVD化されたので、早速観てみることにした。何となくだけど、ブラックタッチのコメディーという印象を勝手に持っていたので、その作風が以外とシリアスなことにビックリ。基本はブッシュ再選時の反キャンペーン映画だった『華氏911』と同類なのだろうと決めつけて思い込んでいたが、チェイニーの人間性に踏み込んで描かれているので、時宜を越えて人間ドラマとして観ることができそうだ。

 クリスチャン・ベールの激太りぶりを話題に宣伝していたが、あの『マシニスト』のベールだぜ!! 極限まで身体を絞り込んだあの状態から普段より20kgも増量した今作まで、俳優ってお仕事もタイヘンだなぁ……とつくづく感心させられる。

 師であり、上司であり、同僚であり、部下だったラムズフェルドとともに、ネオコンの代名詞であるディック・チェイニーの印象は、政府の中枢にうまく取り込み、民間企業に天下りして巨大プロジェクトに参入して巨利をむさぼったトンデモ野郎というものだった。実際、イラク戦争に突入した時もネオコン一味が自らの関連企業の利益のためだけに多くの国費を濫用し、世界中を巻き込んで、私欲のために突っ走る姿に幻滅したものだ。しかも当時の日本はブッシュに尻尾を振る小泉内閣の時代。「自衛隊の行く所が非武装地帯。」という呆れた答弁がまかり通る国会の体たらくに茫然自失状態。答弁もさることながら、そんな答えを引き出すしかない野党の芸の無さにも幻滅。結局、選択の余地をなくして、一度は託した民主党政権。これまた勉強不足のいい加減にしろッ!! と思うほどの無策ぶり。

 将来を真面目に考える純真な人ほど、政治に失望し、享楽的に瞬間に生きがいを求めるしかなくなる現実に、なんとも言えぬそら恐ろしさを感じていたのを思い出した。TVに出てくる評論家どもの口調は、あいも変わらぬ政府批判。そんなことで納得したのはいつの時代だと思ってるんだァ? 僕らはもっと真剣に考えているゼッ!! もう茶番はやめろッ!! ……本気で考えないとトンでもないとこに行き着きそうだ。

 この作品の特徴は、マイケル・ムーアの馬鹿ドキュメンタリーと違って、チェイニーの人間性に迫っているところにあると思う。名門イェール大学をドロップ・アウトした負け犬。同性愛者の娘に理解を示す心優しき父親。そんな側面が、冷徹なネオコンのレッテルとは違って、私たちと違わない人間味を感じさせ、ひょっとしたら、自分の隣に居る誰かがそんなモンスターに変貌するかも……っていう気持ちにさせる。

 そう!! そこが肝心なところ。稀代の悪人と決めつけて、とことん貶めるような描き方ではなく、私と変わらない人間的な側面も映し出すことによって、彼を選んだ側の私たちに問いかけてくる内容なのだ。

 政治に失望していると言いつつ、まだマシかも……っていう選択を繰り返す私たちにホントに考えているの? って迫ってくるものだということだ。……なんか投票に行くのが怖くなった。

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