大きなスクリーンで観たいッという欲求に負けて『グッド・バイ 嘘からはじまる人生喜劇』を観ることになってしまった。事前に得た映画サイトの情報では公開前にそこそこの評価をつけたものをチラ見したため、期待が高まった。何しろ、既に舞台にかけられた脚本らしいので充分練られているだろうと考えていた。

 ところが、これが大コケ! なんだよ! いい加減にしろッと叫んでしまいそうな代物。興行ランキングでもそこそこなので、私と同じ過ちをおかす人が出てこないようにしておきたいと思い詰めてしまった……。

 まず、時代の情勢に対する理解が不十分。終戦後すぐの混沌とした東京。生きてるだけで儲けものッてな状況で占領下で主体性のない政府のもと、何ら効果的な施策の無い混乱。闇市で支えられる生活。それ? 書いた人はホントに分かって書いたのかナ? アッという間にドンデン返しされた価値観。なんなく切り替えられる人ばかりではないはずだ。したたかに生き方を豹変させた人と以前の規範を引きずりながら、自己のアイデンティティーを古来の精神世界に探ろうとする人、敢えて観念に留まらず、日常の些事に没頭することで自我を忘れようとする人……。混乱は闇市の様相だけでなく、心の中も混乱の極みの中に置かれた人びとの様子を描き出すべきではなかろうか。参考に出来る資料、つまりは小説や評論はあまた有るはずだから、単にお勉強不足ってことだろう。

 次に主人公のキャラ設定が不鮮明。おもしろく笑うためには徴兵すらされない虚弱体質の青白いインテリならば、八面六臂の活躍をする北の私立探偵のままではダメだろう。大泉には可哀想だが、あと20Kgぐらい減量してもらって、ちょっとした風でも吹き飛ばされそうなヒョロヒョロになっときゃなきゃ面白味は半減。小池の演ずる担ぎ屋の女はその仕事中の男勝りの力強さと何の身繕いもしない薄汚れた容姿と化粧した時のギャップを変なダミ声で表現しようとするのは姑息! 原作にあったとしても思い切って変える勇気が欲しい。それぞれの役者は充分努力しているが、演出の工夫が足らないと、こんな結果になってしまうのか……と思わずため息が出てしまう。

 つまり、その時代に対する理解や演出者の考えが充分に練られていないために、すべてが中途半端なのだ。

 実際、こんな好材料を映像化するならば、現代の混沌とした世界情勢とからめたり、女性の権利や社会進出の拡大、むしろ男性との地位の逆転状況。戦争で多くの男性を失って女性の力で社会をまわそうとする当時の状況をシンクロさせるとか、幾らでも工夫の余地があったはず。なんか面白いものが作れそうな材料がゴロゴロ……。

 コンゲームなら話題の『コンフィデンスマンJP ロマンス編』がDVD化され、『コンフィデンスマンJP プリンセス編』が5月に公開予定だが、ハートウォーミングな佳作『カラスの親指』。160分は長過ぎるが、見る価値はある。

 

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著者

fat mustache

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