紛争地帯や戦場を写すドキュメンタリーは、その衝撃の大きさやどうにも解決の出来そうにない悲観的な将来に暗鬱たる気分に浸らされるが、1年も経てば記憶の片隅に追いやられて全くと言って良いほど顧みることはない。世界の誰をも敵に回した IS 征服下の町を映し出した『ラッカは静かに虐殺されている』や『ラジオ・コバニ』(どちらもAmazonプライムで観れますヨ)の与えたインパクトは相当強烈だったが、今、そのことに思いを馳せる人がどれだけ居るだろうか?

 同様にシリア国内の反アサド勢力の拠点だったアレッポの惨状を活写した『娘は戦場で生まれた』も、今春日本での公開が実現し、結構話題になっていた……。かなり観たいという欲求を感じたが、折しも緊急事態宣言の発せられる頃、無理も出来まいと諦めていたが、10月に DVD が出たのでリリース当日に観ることにした。世間ずれしていない人たちには相当の衝撃を与えたようで、その難民の窮状に支援をと考えた人たちがアレッポの石鹸に着目してプチブームの様相? 実際はメーカーの販路拡大戦略に乗ってるだけだと思うけど……、なんて事態も起きているようです。 

 なら、なんですぐコメントしない? 訝る皆さんのお声が聞こえてきますが、受けた衝撃の大きさ、病院に担ぎ込まれる爆撃で負傷した人びとの表情、廊下を覆い尽くす血糊、瓦礫に埋まる死体……。だけど、どうしてこれらの映像はカメラに収まっているのか? どうして長編ドキュメンタリーに編集され劇場にかけられるのか? そこには相当の資金が必要だろうし、それを提供した誰かはどんな意図を持っているのか? ロンドンの眼科医出身の少数シーア派の大統領との関わりは? 何もなかったように撤退したアメリカの思いは? 本来シリア領であるはずのゴラン高原を侵略し、入植地まで作るイスラエルの横暴さはどう考える?

 さまざまな事が頭を巡ってどうにも収拾が付かなくなっていました……。そこで、少し時間を置いて考えてみようと試みたのですが、結局は何の理解も深まらず、ただただ呆然とするだけでした。ところが、DVD のリリースと同じころNHK BS1スペシャル「レバノンからのSOS~コロナ禍追いつめられるシリア難民~」(12月31日に再放送されます)と総合で放送された短縮版「世界は私たちを忘れた~追いつめられるシリア難民~」をたまたま視聴して、ちょっとだけ考えたことがあります。

 これは レバノンに逃れたシリア難民がコロナ禍で窮地に立たされる現状を伝えるものです。臓器売買、売春、家庭内暴力…最も弱い存在の女性と子供たちに密着し、世界から忘れられたと訴える難民たちの姿を伝えています。一過性の取材ではなく、かなりの時間をかけて構成されたもので、NHKの受信料を払ってもええかナって思わせるドキュメンタリーの傑作でした。当然、オンデマンドで再視聴できるものと思い込んでいましたが、残念ながら用意されていませんでした。もし、そこにどこからかの圧力が加わったのなら、これはホンモノでしょう。

 見える所だけ綺麗にして隅っこのゴミには知らんぷり!! いい加減こんな茶番は止めにしようや。このサイトで書いた これまた素晴らしい体験っ!! に似た感じ……。なんかイヤな気分になる。 DVD を買うまでしなくて良いと思うけど、一応『娘は戦場で生まれた』のご紹介を 

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著者

fat mustache

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