本格的なミステリー小説を原材とする映画を成功させるのは、至難の業だと思う。最も成功したのはトマス・ハリス原作の『羊たちの沈黙』であるだろう。ただ、余りの素晴らしさのために、ハリス自身の後年作も相当影響を受けているように見えるし、続いた映画やTVドラマも『羊たちの沈黙』を相当意識した作品になっていたと思う……。

 「未体験ゾーンの映画たち2019」の上映作品、『特捜部Q カルテ番号64』は、特捜部Q シリーズの4作目。ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田の2館で、期間限定の公開となった。

 デンマークの作家、ユッシ・エーズラ・オールスンのしたためた特捜部Q シリーズは、早川書房からポケット・ミステリや文庫で刊行されている人気シリーズだ。これを発表順に映像化していったのがこのシリーズなんです。

 第1作『特捜部Q 檻の中の女』(2013年、デンマーク、97分)、2作目、『特捜部Q キジ殺し』(2014年、 デンマーク・ドイツ・スウェーデン合作、119分)、そして、『特捜部Q Pからのメッセージ』( 2016年、 デンマーク・ドイツ・スウェーデン・ノルウェー合作、112分)、いずれも「未体験ゾーンの映画たち」での限定公開だったが、なにしろ本があるのでDVDでの発売は順調なようだ。

 コペンハーゲン警察殺人課の刑事カールは暴走気味に事件にのめり込み、仲間と協調できない社会不適合者。家庭も崩壊させてしまい、署内の鼻つまみ者。とうとう新設されたばかりの未解決事件班「特捜部Q」に左遷させられてしまう。仕事を共にするのはシリア人移民のアサド。今日の社会状況を反映した設定で、長い時間軸の中で話が展開されていく。 

 いずれの作品でも過去の未解決事件ということで、署内の関心は薄く、孤立した捜査が行われるが、因襲と固定化した社会層、ヨーロッパは私が思っている以上に貴族が支配してきた体制が残存しているようで、見た目の近代化や民主化がただ支配層が人びとの要求に多少妥協したことだけのようにしか思えてならない。

 けっこう凄惨な場面も登場するが、二人がどうにも変えようのない社会に必死に抵抗しているようで、思わず拍手を送りたくなるようなエンディングを毎回用意している。

 4作も続くわりには水準以上の出来であることは確かで、キャラクター像が固定してくると、それぞれへの思い入れも大きくなって、今度はどんな事件なんだろう? っていう感じでワクワクしてしまう。原作はあと3作すでに刊行されているから、これからも頑張ってもらいたいものだ。

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