構想30年、企画頓挫9回! 鬼才テリー・ギリアムの映画史に刻まれた呪われた企画が完成! なんていう、うたい文句で始まる公式サイトを見てしまうと何を置いても観に行かなければッ! と公開当日に『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』を観ていたが、なかなか筆が進まず、今頃になって書くはめになってしまった……。なにしろ ヨーロッパ最大規模の莫大な製作費が集められ、2000年にクランクインするも、自然災害を皮切りに、ドン・キホーテ役が次々に腰痛や病に倒れ、主役が幾度も交代、資金破綻と9回の頓挫を繰り返したという代物。しかも、その評価は欧州での絶賛とはうらはらにアメリカでは冷ややかなものだったというところに、また魅力を感じ、一体どんな内容なのだろう……、期待は膨れ上がるばかり、居ずまいを正して上映開始を待った。

 内容は、 仕事への情熱を失くしたCM監督のトビーが、スペインの田舎で撮影中のある日、謎めいた男からDVDを渡される。偶然か運命か、それはトビーが学生時代に監督し、賞に輝いた映画『ドン・キホーテを殺した男』だった。

 舞台となった村が程近いと知ったトビーは思わずバイクを飛ばすが、映画のせいで人々は変わり果てていた。ドン・キホーテを演じた靴職人の老人は、自分は本物の騎士だと信じ込み、清楚な少女だったアンジェリカは女優になると村を飛び出してしまっていたのだ。

 トビーのことを忠実な従者のサンチョだと思い込んだ老人は、無理やりトビーを引き連れて、大冒険の旅へと出発するというもの……。

 どうやら自分はかなりアメリカナイズされているのか、前宣伝のような好印象を持つことができなかった……。劇中乱痴気パーティーを繰り広げるロシア成金と対比するように質素な老人が誰も相手にしないような夢を追いかける様に現代社会への風刺を込めているように見えるが、その金持ちの資金で作っているんじゃなかったのかい? 虚飾にまみれたCM作りに辟易としている主人公。本当にやりたいのは自分の創造性を活かした映像作り……。それも観る人あっての話で、やたらやりたい放題で映画ができるわけじゃないだろう。

 そう、金持ちを揶揄するのは痛快だが、そのおこぼれにあずかって作品を作っていることには無頓着。一体、何を伝えたいんだい? 分からないよッ!

 あなたの自己満足にお付き合いできるほど大きな器量を持ち合わせていないので、どうも自分勝手なオッサンにしか見えないんだなぁ……。

 何となくホドロフスキーと同じ匂い。ヨーロッパ以外では劇場未公開作品となっていて、ようやく2016年に公開された『ホドロフスキーの虹泥棒』がかぶってみえる。もっともこちらはアラビアのロレンスで競演した ピーター・オトゥールとオマー・シャリフの二人芝居。見所はこっちの方があるかも……。若かりし頃の二人は『将軍たちの夜』がお薦め。なにも知らなかった妻がオマー・シャリフの格好良さに圧倒されていた……。 また、ドン・キホーテ製作失敗の顛末は『ロスト・イン・ラ・マンチャ』で。amazonプライムでやっている。

著者

fat mustache

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