『ドント・ウォーリー』を観てきた。風刺漫画家ジョン・キャラハンの半生をガス・ヴァン・サント監督が映画化したものだが、ジョン・キャラハンの自伝「Don’t Worry He Won’t Get Far on Foot: The Autobiography of Dangerous Man」の映画化権をロビン・ウィリアムズが得ており、当初から監督に相談を持ちかけていたらしい。酒浸りの自堕落な生活をしていたジョンが交通事故により胸から下が麻痺、車いす生活を余儀なくされた。周囲の助けをかりて、自分を哀れむことをやめて、持ち前の辛辣なユーモアを活かして麻痺のある手で風刺漫画を描き始める。という筋立て。

  明るいコメディータッチの仕上がりが、お涙頂戴の感激ドラマにはない愛と尊敬をもって描かれた細部に障害者本人にも勇気を与えるものになっていました。ただし、異民族、LGBT、障害者に全米一寛容なポートランドが舞台であることを割り引いて考えないとネ。

 どうして関心が深いかと言うと、実は私自身が右下腿欠損の障害者であるからです。理由は自分自身の不摂生。糖尿病による壊疽なのでエラそうなことは言えませんが、時々、幻肢状態、ありもしない右足が痒かったり、ビグンと痛みを感じたりします。立って歩いている分には全く気づく人もいない状態(ヒザがあるから)なのですが、義肢を外すと、結構ストレスを感じます……。

  そんなことでお薦めするのが『ボストン・ストロング ダメな僕だから英雄になれた』。ジェイク・ギレンホールが製作・主演を務めた実話に基づくヒューマンドラマです。

  ジェフ・ボーマンは、元恋人エリンの愛情を取り戻すため、彼女が出場するボストンマラソンの応援に駆けつけるが、ゴール地点付近で発生した爆弾テロに巻き込まれ、両脚を失う大ケガを負ってしまう。意識を取り戻したボーマンは警察に協力し、ボーマンの証言をもとに犯人が特定されると一躍ヒーローとして脚光を浴びるのですが……。

  突然の両足欠損に、今まであたりまえにできた何気ない行動が阻害され、周囲に当たり散らすジェフ。まったく一緒!! 風呂好きだった私は、今では相当意をもって立ち上がらないと風呂に行けない。入院中、数メートル先の湯船まで片足ケンケンで滑りそうになったトラウマで、ビビってしまう。

  罪悪感から献身的なエリンを追い詰め、英雄にまつりあげ、様々なメディアやスポーツシーンに引きずり出され辟易とする主人公。行き詰まった時、現場で助けてくれた人の話を聞いて、目覚めていく。

  彼は長男をイラク戦争で失い、次男を自死させてしまったことで落ち込んでいたが、救助したことで自らが救われたと感謝の気持ちを述べてくれたのだった。何となくプロパガンダの匂いプンプンなのだが、イラク戦争の戦傷者3万余りの人びとのなかにも、少なからず存在する手足を欠損した人たち。彼らを奮い立たせるための応援歌として挿入されていると考えるべき。

  ようやく何をなすべきかを知ったジェフの再生の道はここから始まる。両足に義肢を装着してたどたどしく歩く姿は、自分のリハビリとも重ねて深い思いで見つめてしまった……。

  障害者のSEX に真正面から向き合ったのは『マイ・レフトフット』。今でもMetacritic のベストムービー18位にランクインする傑作。ジェイク・ギレンホールの思い出深い作品は『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』。こちらは突然、妻を失うことで空虚な家庭生活を痛感したYuppie が、貧しいながらも互いを思いやる貧困層の生活に触れて大事なものを取り返すお話し。『永い言い訳』とかぶるが、どちらも一見の価値はありまっせ。

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