ナチスに関連する映画には少々食傷気味だったが、今年の初めに続けざまに公開された2本のDVDが出揃ったところで書いてみようと思っていましたが、忘れてました! 『ナチス第三の男』と『ちいさな独裁者』。

 前者はラインハルト・ハイドリヒを描いた小説「HHhH プラハ、1942年」の映画化されたものです。親衛隊大将および警察大将の地位に就いていたハイドリヒの出自は作曲家の息子というものだが、その父は木工職人の家に生まれていたから、庶民の出だったんだろう。ダンサーから転身した作曲家として名を成し、ザクセン王国の宮廷顧問官だった音楽研究家クランツ教授の娘と結婚することで上流階級に顔を出すようになったらしい。ラインハルトは海軍に入隊し、キール海軍基地の通信将校として勤務し始める。将校(中尉)ということは貴族の待遇を受けているわけだから、将来を嘱望されるエリートということになるのだろう。ところが、海軍中佐待遇の軍属の娘との交際のもつれから軍法会議にかけられ、海軍を不名誉除隊する。

 そこで、親衛隊上級大佐フリードリヒ・カール・フォン・エーベルシュタイン男爵の推薦をうけて、親衛隊全国指導者ハインリヒ・ヒムラーの面接を受ける機会を得、情報部組織の責任者として入隊することになる。その場所でメキメキ能力を発揮し、強大な権力を持つ第三の男になるのだった。小説にある4つのHとはヒムラーがゲーリングから Himmlers Hirn heißt Heydrich、ヒムラーの頭脳、すなわち、ハイドリヒと嘲られていたことに由来する。

 どうも自らの金髪碧眼、長身痩躯の北欧的容貌と戦前より上流階級と交流したことから養鶏業者出身のヒムラーを蔑んだ目線で見ていたように思える。多くの内部粛清に躊躇なく、ホロコーストの最高司令官として大量虐殺を断行するのは、職業的、民族的偏見に満ちていたからだろう。しかし、何故、多くの人びとが彼の言動の前にひれ伏すことになったのだろう……。

 後半は一転してハイドリヒ暗殺計画を実行する亡命チェコ軍人2人と彼らを支えた市民抵抗勢力の様子が描かれる。でも気になるのは特権意識の強さと人を見下す冷徹さ。いまだにドイツ人から払拭しきれない階級意識。我々をチーナ! チーナ! と嘲り笑う不良青年に代表される強烈な差別意識。変わってないよ、ドイツ人は。

 もう一作は『ちいさな独裁者』。実話ということらしいが、敗戦直前の兵士の軍紀違反の相次ぐ中、命からがら逃亡したヘロルトは捨てられた車両の中で軍服を発見。それを身にまとって大尉に成りすまし、道中出会った兵士たちを次々と服従させ親衛隊のリーダーとなっていく……。

 寸法の合わない軍服に何の疑いも持たず、高級将校までもが彼の言葉に従って軍律維持のために数多くの兵士を射殺していく。なんじゃこりゃ!! 多くの犠牲者を出しながら遂に軍法会議にかけられたヘロルトは無罪を言い渡される始末。もう一度、なんじゃこりゃ!! ヘロルト以外の登場人物はみんな思考停止状態ってことかよ。これまた、ドイツ人の言い訳じみたたわいもない戯れ言。

 責任回避を計るため、すべてを丸投げする呆れた態度。なんじゃこりゃ!! これが普通かッ! 保身だけを考えた行動は地位のある人ほど罪が大きい。いまの社会では、またぞろ保身の積み重ねでとんでもない事態を引き起こしそう……。しっかりとした判断を下す時が近づいています。

 殿、ご決断をッ!!

  ロベルト・シュベンケ監督へのインタヴュー記事が載ってました。良かったらどうぞ。

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著者

fat mustache

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