ようやく『記者たち 衝撃と畏怖の真実』がDVDリリースされることになった。実は、『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』に抱き続けた気持ちを二つの映画の比較のなかで書き記したいと願っていたので、遅ればせながら書くことにした。昨年前半に話題を集めたペンタゴン・ペーパーズは監督がスピルバーグで、超大物俳優のメリル・ストリープ、トム・ハンクスの共演となると、批評家たちはこぞって絶賛し、政府の陰湿な圧力に屈することなく正義を貫いたワシントン・ポストの姿勢に感動しているのだろう。

 ところが、私は公開直後に見終わった時から、何かしらモヤモヤとした感触を持ってしまった。

 そもそも、そんなに凄いスクープなの?既に報告書の一部をスッパ抜いたニューヨーク・タイムズに遅れを取った中での掲載だから、そんなインパクトは無いと思うんだけれども……。社運をかけた一大決心というけれど、政権から掲載中止の命令が下される危険性が…ともいうけれど、全てを失うような切迫感が感じられない。

  確かにペンタゴン・ペーパーズが白日の下に晒された時、はなから勝ち目のない戦争を延々と続けていた政府への不信感は頂点に達しただろう。しかし、当時の民衆にはテト攻勢でのふがいない米軍の有り様と前年にウェストモーランドが発表した楽観的な声明のギャップに、近い将来起こり得る不名誉な撤退を予見する人たちが数多く居たに違いない。

 テト攻勢の時、まだ中学生だった私は、南ベトナムの国家警察総監グエン・ゴク・ロアン(阮玉鸞)がサイゴンの路上で、解放戦線の捕虜、グエン・ヴァン・レム(阮文歛)とされる人物を拳銃処刑したシーンをTVニュースで見てしまった。倒れ込んだ頭から吹き出る血が流れる様に現実の戦争の凄惨さを見せつけられて絶句したことを覚えている。

  おそらく、戦場の様子を知らされていなかったアメリカ本土の人びとも、このシーンやナパーム弾で焼かれて全裸で逃げてくる少女の姿を目にして反戦の気運が高まっていたのだろう。そう、反戦への思いが強くなって抗議活動が頻発する社会状況のなかで、政府が悲観的な見通しを記した報告書を隠していた事実を知ったところで、だからなに?ってことになるだろう。

 つまり、必要以上に盛り上げて、新聞報道の意義を訴える一種のプロパガンダにしか思えなかったのだ。

 対して『記者たち 衝撃と畏怖の真実』はイラク戦争の大義名分となった大量破壊兵器の存在に疑問を持ち、真実を追い続けた記者たちの奮闘を描いた実録ドラマ。さっきの二大紙の記者たちが大統領の発言を信じて報道を続ける中、弱小通信社の記者たちが真実を報道すべく情報源をたどっていく話。

  二大紙が政府中枢の大物や要職にある人物に個人的な交流を生かして取材するのとは違って、政府機関の末端にいながら良心からリークした人たちの情報を丹念に繋ぎ合わせて確信を得ようとする作業には思わず引きつけられた。エンドロールで流れるNYタイムズの大物記者の言い訳じみたインタヴュー映像……。

 世の中、権力(力)を得た者は保身に走りやすい。二つの映画を同時に観たら、違った側面に思いが走るかも知れませんぜぇ。

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