ずいぶん前に、たまたまBS朝日の「シネアスト」という番組の初回を見る機会があった。 映画『シン・ゴジラ』で第40回日本アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞した山田康介さんが安藤桃子監督と対談しながら、実際の撮影方法を実演していく構成だったと思うが、フィルムカメラへのこだわり、銀残しの技法の説明など……。思わず身を乗り出して聞き入る興味深い話だった。

 その山田氏が永らく撮影助手を務めたのが、木村大作さんだったという話から木村氏へのインタヴューに移行して、往年の名作から自身が監督を務めた最新作まで、撮影現場での裏話を聞くことが出来た。

 ムムッ? なんだ新作の番宣かぃ? といぶかりながらも『散り椿』を劇場で観るはめになってしまった。

 デジタル全盛のこの時代、何度でも取り直しはできるし、余計な物が映っていても画像処理でどうにでもなり、VFXを使えば何でも出来てしまうこのご時世。あえてフィルムにこだわる意味は何なのだろう。撮影監督が、そのワンカットのために何をしているのか、どんな思いを込めているのか、今までになく興味をそそられて画面に食い入った……。

 要は画面の深み、奥行き、空気感なんだナ。セットで撮影する時も計算し尽くした配置で何台ものフィルムカメラを駆使して、1回撮りで作られていく画面には緊張感がほとばしり、その組み合わせで綴られる物語には他では感じようも無い臨場感やえもしれぬ重みが加わって、思わず肩に力が入ってしまう。つまり、演者や制作者との一体感みたいなものを感じてしまう……。これなんだっ!と思ってしまった。

 そういえば、木村大作氏が監督した前2作、『劔岳 点の記』(2009年、撮影兼務)、『春を背負って』(2014年、撮影兼務)も3000メートルの山上に何台ものフィルムカメラを持ち上がって撮影されたと聞いた。ひとつひとつの風景カットが見事なスチル芸術写真として成り立つ凄まじさ。

 演ずる役者もうかうかしていると風景の圧倒的な力に飲み込まれて、印象を残すことすら出来ないかも……。そういえば『ミスティック・リバー』の日本版『追憶』もキレイだったなぁ……。

 

広告