最近は公開もされずストリーミングでお目にかかる作品が増えてきてしまった……。これは自分の主旨とも違うし、日常にはない異世界を体験するために、敢えて一定の距離感を置いて見に行こうとする公開映画とも違う趣だ。聞き逃したフレーズを悔しがることもなく、マウス操作一つで何度でも再生できる。画面はPCのディスプレイだから、当然小さくなるけど、いつもの位置に座ると40cm前に現れるから結構迫力もある。

 だから、何なんだッてお叱りの声も聞こえてくるが、ストリーミング新作を観る機会が増えてくると、これを無視するわけにはいかないだろう。ここでも、シネマンドレイクさんの記事を参考にしました。

 『ザ・レポート』もそんな作品のひとつだ。全米では2019年9月に劇場公開されたそうだが、劇場公開に重心を置かず、Amazon Prime で11月には日米双方で公開されることになった。

 もともとのタイトルは 『The Torture Report』だったらしいが、Torture の所をマーカーで消したようにして、『The Torture Report』としている。話の内容は上院調査委員会がCIA がアルカイダ容疑者の尋問ビデオを破棄したという報道から疑念を抱いた議員が調査スタッフを招集して議会権限で真相を解明しようとするもの。レポートはその報告書のことだ。

 調査は意図的隠蔽、妨害、共和党側の離脱等々で困難を極め、7年以上の歳月をかけることになってしまう。その一人の調査員の孤軍奮闘ぶりを描いた作品なのだ。世間の評価は苦難のなかで信念を貫き通した男を英雄視するものが多く、『大統領の陰謀』に匹敵する傑作として取り上げるものもあるが、自分のなかでは別の側面が気になってしまった……。                       

 誰が考えても、今時「拷問」による自白に有用性があるとは思えないし、極めて人権を侵害する恥ずべき行為であることは明白だ。お隣のかの国のウィグル人への対処や法輪功の弾圧にみられる様々な所業を冷笑しているアメリカが同じような過ちを犯すとは考えがたい。ところが、巨大化した組織同士の縄張り争い、CIA とFBI は対テロ対策で手を取り合うべきなのに対立を深めていく……。なんとか成果をと焦るところに「強化尋問プログラム」などと銘打った尋問手法が呈示される。いかにも科学的根拠があるような言葉が並べられるが、内容は単なる拷問。これをアッサリ承認する瞬間が背筋が寒くなるほど怖くなるポイントだ。

 国家機関の中枢。英知の凝縮した場所で、いとも簡単に認められる拷問。しかもその実行にかかる莫大な経費は国家予算から捻出される。怖いのはどう考えても尋常とは思えない決定がいとも簡単になされ、その結果を長官以下全スタッフが必死になって擁護することにあるのだ。

 歴史上、国家の犯した様々な過ちは正しくこれと同じ構造のなかで繰り返されてきたと感じることだ。コロナに魘されるこの瞬間も同様のことが起きてはいまいか、考え出すと夜も眠れない。

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