『ペトラは静かに対峙する』を観てきた。さほど食指を動かされたわけではなかったのですが、ちょっと雰囲気の違うのもいいかなぁと思ってそれほど期待感を持たずに扉をくぐりました。スペインの片田舎、カタルーニャの落ち着いた田園風景の中で繰り広げられる家族の愛憎劇。仰々しく章立てにしたうえ、その順番を入れ替えて謎解きを複雑化しようとする試みは欧米の批評家たちに酷評され、ギリシア悲劇を目指した高慢で鬱陶しい作品と「喝ッ」五つくらいの言われよう。

  確かに、「観客に喜んでもらうことはとても難しくなりました。なぜなら、もし提示しすぎると、彼らは簡単すぎると言って映画を貶すでしょう。そして、もし、少ししか提示しなかったとしたら、わかりづらいと言って貶すでしょう。ちょうど良いものを見せないといけないが、多すぎてもいけないし、心を動かすバランスは難しいものです」と語る監督の観る側に対する意識はいささか過敏なものを感じてしまう。

  もっと普通に観たけりやどうぞってな感覚でさりげなくしとけばもっと良い評価を得たのかも知れない。ただ、デヴュー作来、国際映画賞に出品し、多くの賞を受賞してきた経歴が新作をなす時のプレッシャーとしてのしかかっているような印象を受けてしまった。そんなに気張らずに気楽に撮ってもらいたいところだ。

 内容は画家であるペトラの父親探しと著名な彫刻家で財を成したジャウメの傲岸な態度に振り回され苦しむ周辺の人びとを描写し、幾つかの死を招く過程を通じて観客に考えさせようと腐心している。

 ペトラって、どっかで見たなぁと思っていたら、そうか思い出した。『マジカル・ガール』のバルバラじゃん。

同じようなダークな結末の『マジカル・ガール』だが、こちらは日本のアニメ文化がやたら取り込まれた筋立て。難病の娘が求める高価なキャラクター衣装のため、強盗まで考えた男が、ふと知り合った女と関係を持ち、それを強請のネタにして資金を得ようとしたことから転げ落ちる運命の輪。この女バルバラの謎めいた行動と彼女に惹かれる男の狂信的な行動。

 元は教師だった二人の男の行動は偏執狂的で常軌を逸しているが、その一途な愛ゆえに起こす異常な行動になにか自分の心の片隅に潜む狂気を感じてしまう。もし、同じような境遇に置かれてしまったら、やってしまうかも……。スリラーの要素はこちらが一枚上、観るならこっちですわ。

  それにしても、スペイン映画はよく簡単に人を殺すなぁ。死が究極の恐怖だとは思えない。生きながら地獄のような境遇に落とし込められる方がよっぽど怖いけど……。スペインでは既に日常が地獄なのか??

広告
著者

fat mustache

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です