公開から1ヶ月経って、ようやく『エリカ38』を観に行ってきた。死の寸前に樹木希林が企画したということで話題になっていたが、彼女が目を掛けていた浅田美代子に当て振りした内容と聞いていたので、さほど期待をせずに扉を開けた……。

 入ってみてビックリ!! 意外と入っている。少なくとも二、三十人は居たかなぁ。でも、加齢臭とは違う独特の臭い……、なんだこりゃ? と目をこらしてみると、私以上のお年の人たちばかり。デイサービスで訪れる施設かいな? と勘違いするほど老人しか居ないのだ。男女ともどちらもかなりの人が観に来ている。

 最近にはメッタにお目にかからないスタンダードサイズ。真ん中に焦点を合わせて注視出来るので、逆に入り込みやすい。

 その内容は、熊本で起きた投資詐欺の山辺節子の顛末をモチーフにしている。60過ぎながら、極端な若作りでケバい格好で闊歩し、散在をくり返すトンでも女は、既に一部で話題になっていたらしいが、数億とも言われる巨額の資金を集めた手腕にも驚くが、巧みな話術で翻弄する刹那的な生き方にただただ唖然とするばかりでした。

  勝手に想像していたシニカルなコメディータッチの際物作品というイメージとは違って、かなりシリアス! 事件を取材する記者の視点から、特異な行動に至る真相に迫ろうとするものでした。

 まず最初に驚かされるのは、背後の黒幕を前面に押し出していること。確かにこんな絵図を書けるような女性だとは思えないので、裏には手引きした黒幕が存在するのは見えているが、世間に晒された内容だけでは断言できるほど、確信の持てるところではない。それを当然の事実のように打ち出し、男に利用されるだけだった主人公の精一杯の逆襲のように描いて、全体に悲哀感の溢れるトーンで押し切っている。

 こういう観客席、どっかで感じたなぁ……と思っていたら、帰り際に思い出した。『後妻業の女』がそうだったっけ。こちらは見に来る色ぼけ老人に気遣って、昭和テイスト満載のコメディーにすることで、衝撃を緩和して、さりげなく諭すように観客の陥りそうな過ちに気づかせようとしているように思える。それはそれで良いのだろうが、投資話に飛びつきそうなご老人が「ひっかかるほうもひっかかるほうやでぇ」みたいな感じで見過ごすのもどうだろう。

 主犯の女の壮絶な過去話を挿入することで、特異な環境であるように感じさせ、傍観者で居られるように仕向けているが、引っかかった人たちの抱える孤独感、金銭ではなく、ひとときの安堵感に惜しげも無く全てを投げ出す気っぷの良さは、差し迫る死を予感しているからであり、生への執着を失った時、何でもしてしまうデガダン的な様相を持っている。

 つまり、目前の死を直感した老人たちはすべからく退廃的なのた!! 

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著者

fat mustache

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