先だっての川﨑殺傷事件や元農水省次官による息子殺しで中高年の引きこもりが注目を集めているらしい。8050問題? 、内閣府が「引きこもり」の40~64歳が全国で推計61万3千人いると調査結果を発表した? 小中学生の不登校者数が1997年来10万人を越えている? そのまま部屋に引きこもってしまうと、将来的には……って考えてしまうと、どうなることやら……。

  ある人が言っていたが、引きこもれる快適な「部屋」が有るから引きこもれるんだっ! というのは的を得ている。貧しかったかつての日本では、一人静かに過ごせるような場所を住居の中で見つけることは、どんな富裕層でも有り得なかったこと。だから、その貧しい住環境を経験した人びとには「ぜいたくな悩みやのぅ……。」と映ってしまう。最初から「引きこもった」人たちに寄り添うのではなく、ポンと突き放した目線で見てしまうことになりそうだ。

  その「引きこもり」問題をコミカルに取り上げた映画が『鈴木家の嘘』という映画です。これは松竹ブロードキャスティングのオリジナル映画プロジェクト第6弾となる人間ドラマで。ある日突然引きこもりの長男が自殺し、そのショックで記憶を失った母のために、父と長女は「彼は仕事でアルゼンチンに行った」と嘘をつくということから始まります。監督・脚本は、『セトウツミ』などの助監督を務めてきた野尻克己さん。

 実はこの人のお兄さんは引きこもった果てに自死している。当事者として家族の一人を喪失した時、それまで考えたこともなかった家族……、突然降りかかる大きな喪失感、そこから家族のことを真剣に思うようになったんだそうです。その監督が意を決して書き上げた脚本。一見しただけでは感じ取れない強い思いが込められています。

  当事者であるがゆえに、残された家族の抱える深い悲しみと悔悟の念に思いを寄せて、敢えて語ろうとしていない。彼の境遇を知らなかった私は、嘘をつかざるを得ない切迫感や、そんな嘘をつき続ける家族関係に言及しないことに不満を憶え、何でもかんでも詰め込んで冗長になりかけた内容に失望していた。観客を引きこもりの知識がほとんどない人びとから現に家族に引きこもりを抱えて苦しんでいる人たちまで拡げようとするから焦点がボヤけるんだよッて思ったりしていました。DVDが発売されたら、もう一度、見直す必要がありそうです。

  引きこもりに焦点を当てた作品は幾つかありますが、『世界は今日から君のもの』は是非、一度観てみたい作品。要はヒッキーからの生還を描く映画なのだが、全てがうまくいくように結末を持ってきていない所が良い。父親に描かれた、一見子どもの心配をしていそうで、実は腫れ物に触れるように核心に迫らない親、離婚した母親は子どものことを気に掛けるようで、過干渉の果てに子どもの可能性をことごとく啄んで、自分の思い通りに置こうとする……。二つのステロタイプで、この映画を観ようとする人たちに気づかせようとしている。

  もっと感動を得ることに特化するなら、『おにいちゃんのハナビ』かな? 恋人どうしの関わりの中では『生きてるだけで、愛。』ってとこかな? 何本かを観てから、もう一度考えてみたいと思います。

  

広告
著者

fat mustache

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です