2018年の正月、初笑い映画として公開された中井貴一&佐々木蔵之介のダブル主演による『嘘八百』は、なかなかのヒット作品となって、けっこう長く上映を続けていた。概して、コメディに対する評価はヒューマンドラマや社会派映画に比べて低く抑えられる傾向があるように思う。なにかしらの主張や感涙にむせぶ場面を挿入しないと、批評家たちの琴線に触れないのかも知れない……。

  ところで、漫才やコントと違って、映画でコメディをやるとすれば、それこそ設定は思いのままだろう。大がかりなセットも作れるし、登場人物の数にも制限を設ける必要はない。だから、シチュエーションの妙味やコミカルな動きで笑いを誘おうとしてくることが常だ。

  でも、ハチャメチャな大仕掛けの派手な画面の場合、思わずのけぞって「ワァオゥ! 」と声を発することはあっても、身を乗り出して画面に食い入ることは滅多にない。もちろん、ハチャけているのが駄目ッ! ってことではないのだが、年を取ると、絶叫マシーンに乗ってるような目まぐるしい展開にはなかなか追いついていけないものです。

  だからってことではないが、場面展開のはざまで交わされる会話の掛け合いに心を奪われるってことはないだろうか。しゃべくり漫才のようにテンポよく繰り出される言葉のシャワー。聞いているうちに「おぉぉ……」と首を伸ばして注視してしまう掛け合いにこそ、コメディの真髄があるんじゃないかと思う。

  昨今の骨董ブームを皮肉った設定も時宜を得て、中高年層には興味の深いところ。大物鑑定士に一杯食わされた古物商が冴えない陶芸家と結託して”幻の利休の茶器”を仕立てて一攫千金を目論むという筋立てはコンゲームの趣も加味されてスリリングに展開する。

  同じ骨董、古美術を題材に手がけた『文福茶釜』は、お笑いの老舗よしもとクリエイティブ・エージェンシーの製作によるもの。ただし直木賞作家・黒川博行の原作に忠実であろうとしたためか、言葉の掛け合いが練れていないためか、まぁ今一つって感じ……。

  『嘘八百』には続編の製作と2020年正月での公開が発表されている。

  主演の二人のそれぞれの前作コメディも一度は観ておきたい逸品。『グッドモーニングショー』は、落ち目のキャスターに降りかかる災難だらけの一日を描いた佳作。テレビ出身の監督がテレビ局の内側を子細に描いてワイドショーの作られ方を暴露する趣向に、思わず引き寄せられる。しかもテレビ局の持つ軽薄な体質、視聴者をステロタイプ化して寄り添う姿勢を一切感じさせない白々しさ。テレビの衰退って、結局、こうゆうことなんだろうなァと考えさせられた。

  『破門 ふたりのヤクビョーガミ』は『文福茶釜』と同じく黒川博行の第151回直木賞受賞作「破門」を原作にしているが、こなれた仕上がりになっている。佐々木と横山裕とのダブル主演によるハードボイルドアクション? いや、完璧なコメディ。ヤクザの組どうしの揉め事に翻弄される二人の掛け合いが見事にハマっている。高学歴ヤクザ桑原の愛唱歌The Manhattansの”There’s No Me Without You“もいやに耳にのこってるなァ……。

  

  

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fat mustache

掛け合いやネ、コメディは。 Comment

  1. […]  エンドロールにはつづくの文字。冗談じゃないッ! こんなんだったら、続けない方が賢明というものだ。まさかと思うけど、制作側の誰かがこのサイトを一瞥して、前作『嘘八百』で記した記事「 掛け合いやネ、コメディは。 」とこれを読み比べて正しい着地点を見出してくださることを切に願うばかりです。  […]

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