公開映画からの話が続いたので、ここらでDVDに立ち返ってみましょう。まずは『ある女流作家の罪と罰』から。2018年の作品ながら、日本未公開ということでDVDが2019年7月3日にリリースされました。

  確かにそれほどインパクトに富んだ内容ではないので配給会社も買い付けに逡巡したのかも知れませんが、当の本人の自叙伝という実話をベースに作られたなかなかの作品。キャサリン・ヘプバーンのインタビュー記事を発表し注目を集めたリー・イスラエルは伝記作家に身を転じ、幾つかの作品を発表して好評を得たらしいが、その後は鳴かず飛ばずで文章の校正係として糊口を凌いでいた……。

  その生活は荒れ放題。部屋には飼い猫の糞が散らばり、仕事中も酒をあおる放蕩ぶり。ついにクビになって万事休す。行き詰まった中で最初に記したヘプバーンの著作を見たとき、彼女からの私信が挟んであるのを目にした。取りあえずのカネ欲しさに古書店に持ち込むとそこそこの値段で売れてしまった……。

  これに味をしめた彼女は、著名人の私信をいかにもありそうな内容で捏造することを思いついてしまった。かつて、それぞれの人物の評判や私生活を知り得る立場に居たことから、結構スキャンダラスな内容に仕上げた偽手紙を古いタイプライターを何台も使って作り上げていった。

  最初はけっこう高値で売れていたが、怪しいという噂が広まり、誰も相手にしなくなっていくと、友人のゲイのアイデアで、本物と作った偽物をすり替えることを思いつく。

  とある大学?の図書館にアル中女流作家(脚本家)の研究をすると偽って入り込み、リリアン・ヘルマンの手紙をすり替えてしまう。私文書偽造だけでなく、窃盗までやってしまうのだ。

  ついにFBIに捕まることになって、それでも彼女は自分の行いを悔いているようには見えない。自らの表現力への過信と不遇な境遇を人のせいにして世間を罵り、横柄な振る舞いを止めようとしない姿にただただ悲哀を感じるだけ。どうして冷静に自省する瞬間を持てないのか? 他人を蹴散らす対象とくらいにしか思っていない傲慢さ。受けたストレスを酒で紛らわそうとする自堕落な生活。少しでも他人の優しさを感じることはないのだろうか。

  なんか、余りの頑なぶりに呆れかえってしまいました。

  そして、よからぬ考えが頭をよぎりました。それって、ひょっとしたらある民族に多くみられる特性? イスラエルという名前はもろにそのことを想像させます。家族ばかりでなく、出会う人びとみんなのなかに思いやる心を見いだし、自分もそうあらんとする……。その時、自分が生かされている意味を感じられるのだと思います。つまり赦しの気持ちが欠如しているのじゃ。

  突然出てきたリリアン・ヘルマンですが、その若かりし頃を綴った映画、『ジュリア』には思い出があります。迫害前夜のドイツの様子がよく分かりますが、ジェーン・フォンダの能天気な演技には辟易としたものの、ヴァネッサ・レッドグレイヴは出色。そして、アカデミー助演女優賞を受けたときのパレスチナ支援のスピーチに沸き起こるブーイング。TVでリアルタイムで観た時、アカデミーの正体を見た思いがしました。

  町山智浩氏がTBSラジオ「たまむすび」の中で『ある女流作家の罪と罰』を紹介していたものを書き起こされた人がいます。そっちの文章のほうがよっぽど魅力的なので、参考にしてください。

広告