『ライオン・キング』を4DXで観てきました。で? なんなのと思われる方がほとんどでしょうが、3Dでも結構な迫力を感じるところに揺れや水しぶき、風を思わせるエアーの噴射が加わると、完璧にその世界に入り込んでしまいます。動物だけでなく背景の細かい部分までCGで本物らしく描かれているため、BBCアースの動物ドキュメンタリーを観ているのかいな? と思わせるとてつもないCG作品。エンドロールに流れる厖大なスタッフの名前、一体どれだけの人びとが製作に携わったのか? 金さえあれば何でも出来てしまう恐ろしい仕組みに感心するばかりでした。
これはCGだから実写とは言えないでしょうし、動物の表情が擬人化されて分かりやすい表現をとっているわけでもなく、宣伝記事では超実写版なんて言っている。
ただ、まだまだ試行錯誤の段階にある映画だと感じました。動物を極めてリアルに映像化すると、その動きには自ずと制限が生まれてしまいます。乏しい顔の表情を補うように身体のちょっとした動きで表現しようとすれば個々の動物を入念に時間をかけて観察し、それぞれの特性を見極めなければならないでしょう。それこそBBCアースのような動物映画を徹底的に見続け、しかも観客に分かるように表現するためにはとてつもない時間と手間が必要になるんでしょう。
かといってストーリーは感動的なドラマチックなものでなくてはなりません。そのためには動物の習性を忠実に表現するだけでは無理があります。虚構と現実をどう折り合いをつけさせるか? なかなか難しそうです。
ストーリーは94年のアニメを踏襲しているので新鮮味は乏しく、私のような年配者には「ジャングル大帝」のパクリとしか思えないのが残念。人間社会との関わりを遮断したことがかえって、この物語の次への展開の可能性を絶ってしまっている。どうせCGでやるのなら、われわれの想像を超える異空間、別惑星での話ぐらいにまで飛ばせば、絶対に現実では見られないトンデもストーリーが生まれるのかも知れません。
まぁディズニーのことだから、純真な子どもたちがメインゲスト。そこは動物図鑑をもっと面白く読めるようにしてあげましょうというスタンスに終始するのでしょう。つまりはB級映画に収まりをつけてしまうってことかも……。
そう言えば、ジョン・ファブロー監督の前作『ジャングル・ブック』(2016)も主人公のモーグリ以外は全てCGだったんだなぁ。こちらは多少デフォルメが効いていたけど、リアルすぎる画像が子どもたちに「ホンモノ」と認識させてしまうとでも批判されたのか、あるいは設定が現実性に乏しいとでも言われたのか、こうなると年齢制限でもかけますかな。
まぁ、年末にはDVDもBDも発売されるでしょうから見比べてみては?